鍼灸(しんきゅう)その他の皮膚を刺激する治療法は東洋医学に限らず世界中にいろいろな形であるが、現代の日本でおこなわれているもののほとんどは、中国に起源をもつ経穴や経絡の考え方を基本にしている。
治療点や、各症状に対する反応点は必ずしも経穴経絡の分類とは合わないが、病気に対する東西医学の診断方法の違いによるところのもので、間違いではない。
病名は西洋医学的な診断結果から付けられるものがほとんどで、これに東洋医学的な治療点をあてはめているので、混乱が生じることになる。
東洋医学の診断は体の状態を全体としてとらえて、過不足や虚実(きょじつ)などを調整することを治療としている。
したがって、現代の病名と経絡的な治療点の系統的体系は合わないが、各経穴はそれぞれが作用のよくある点であり、また名前も付いているので広く応用されることになっている。
体に変化があると皮膚など体表が変化し、又この体表点を刺激すると主に対応した部位に作用する。
永年の経験からよく変化し、又各部によく作用する点に名前を付けたものが[経穴]で、現在の鍼灸学会では体の中心の各点を一点として左右対称に二点を一点として、三六一点をWHOで決めようとしている。
これらの他にもよく作用する点が多くあり①経穴には含まれていないが、よく効くと認知されている定点である奇穴(きけつ)、②患部上や離れた所でその症状に対して反応する皮膚点の何是穴(あぜけつ)、などがある。
東洋医学から見て作用が関連する経穴を団子の串のように結んだ線を経絡と現在では云っている。
東洋医学の考え方では、人体には左右に一二対の経絡とよばれる通り道があり、人が生きている証しである気血栄衛(きけつえいえい)という源泉が経絡を通路として全身を循環しているとしている。
経絡上の流れの滞りや過不足が病気で、それぞれの経穴への刺激で治療することで調整し健康を取り戻せるとしている。
これら一二経に属する経穴を越境して連絡している奇経(きけい)が八脈あり、一二経脈が病的変化をおこしたときに安全弁の働きをするとされている。
経絡は解剖学、生理学など現在の医学では物理的にも又現象も存在が確認できない。しかし東洋医学の診断法である、脉診をはじめ、顔色、声量、腹診などから各経絡の虚・実など病的な変化を診断して、それぞれの経絡の五行穴と云われる特別の働きをする経穴へ本治法とよばれる症状ごとの治療をして調整すると、ほとんどの病気で健康が取り戻せることが多い。
凝りや痛み、更に種々の病気に対して、直接患部などへ治療する標示法(ひょうじほう)が多くなっているが、本来の東洋医学の基本は本治法であり、
本書に記載の各症状ごとの治療点も経絡としての統一性とは矛盾している。